「25億円の財源不足」は不正確 市民サービス削減を急いで決めるな

並木市長は財政非常事態宣言を10月1日に発表し、その中で「来年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響により市税収人などの大幅な減収が予測され・・・来年度予算を試算したところ、約25億円の財政不足が生じる結果となりました・・・これまでと同様のサービスを提供し続けることが難しい見込みとなっています。」と述べています。

「約25億円の財源不足」があたかも本当のことのように宣伝され、そのため「18歳までの医療費無料化」「障がい者や高齢者の福祉サービス」などは廃止、削減もやむを得ないかのように宣伝されていますが、「約25億円の財源不足」自体が正しい数字ではありません。

「約25億円の財源不足」が一人歩きしている

8月27日の市議会全員協議会で「新型コロナウイルスの本市財政への影響」という資料を市長が配布しました。市民税などがどの程度減収となるか現時点ではわからないので、平成20年度のリーマンショック時を約32%上回る悪化(国が7月30日に発表した資料から)として試算した。令和2年度は法人市民税等で14億1600万円減収として試算しています。令和3年度は個人市民税が13億円減収、法人市民税等が3億7400万円減収と試算しています。令和3年度の当初予算が試算され、歳入は令和2年度と比較して20億6200万円減、歳出では3億8100万円増でその結果24億4300万円の財源不足となるという試算です。十分な検証もしないで「約25億円の財源不足」が一人歩きし、市民サービス削減の理由となっています。

日本共産党市議団が5点について指摘

①8月の段階では地方自治体の税収減に対する国の補てん策も発表されない時期なので、より正確な数字が判明する12月以後に議論すべきだ。情報不足で不正確な数字で市民サービス削減を決めるべきではない。

②減収の試算も不正確だ。リーマンショック時を参考に試算するのは良いが、市の試算等は法人市民税等として、法人市民税(会社の税金)と軽自動車税、市たばこ税、地方消費税交付金など8つの交付金を合わせて全て26・5%減収すると試算している。法人市民税はコロナの影響を受け減収すると思うが、軽自動車税は保有に係る税で26%も減るとは思えない。それぞれ分けて試算すべきだ。実際に分けて試算すると減収額は少なくなります。財政部長は笠原議員から間違いを指摘され認めたにもかかわらず、市は変更していない。

③令和3年度の歳入では大和田2,3丁目の土地区画整理事業で固定資産税が約2・8億円増収になると市は説明してきたのに、今回の試算に入れていないのは歳入を少なく見せるためではないか。

④歳出では投資的経費は2年度と同額としているが、志木駅南ロ周辺整備(令和2年度は約3億5700万円)や大和田・坂の下橋整備(約5億8600万円)などの大規模工事は2年度で終了し、3年度の投資的経費は減る予定なのに同額にしているのは、歳出を大きく見せるためではないか。

⑤財政調整基金は来年3月時点では5億1500万円となる試算だが、これは少なく見積もっている。例年3月で財政調整基金は増額されてきた。令和元年度は4億6000万円、平成30年度は7億9100万円、平成29年度は6億4400万円増額されたのに、令和2年度はゼロとなっている。笠原市議の質問に財政部長は「金額がはっきりしないのでゼロとしている」と答弁している。例年通りとなると4億〜6億円ほど財政調整基金は増え、25億円の財源不足はその分減ってくる。

以上説明したように、「25億円の財源不足」は不正確な数字です。8月末から状況は変わってきています。コロナで税収不足となったのは新座市だけではありません。全国知事会は国に対して、十分な補てん策を要望しています。先週号でお知らせしたように、総務省は「自治体が必要なサービスを提供できるよう措置する」と9月30日に発表しました。しかし、並木市長は8月末に試算した数字にこだわり、数多くの市民サービスを廃止、削減しようとしています。

廃止、削減するサービス内容を市民には隠し、12月議会で急いで決めようとしています。須田市長の時代に、市民の運動もあって他市よりすぐれた福祉などの市民サービスを実現してきました。「18歳までの医療費無料化」はその象徴です。壊されてはたまりません。

日本共産党は市民のみなさんに情報を伝え、力を合わせて市民サービスを守る決意です。

(にいざ民報 2020年11月15日 No.1878)