「税収は減らない」のに財政非常事態宣言?財源不足25億円ではなく歳入の方が5億円上回る

並木市長は9月市議会で、「令和3年度当初予算の試算をしたところ財政調整基金をすべて取り崩しても約25億円の財源不足が生じるので多くの事業を見直す」と述べ、10月1日には、「財政非常事態宣言」を発出しました。12月市議会には、子育て・介護・高齢者・障がい者など12の福祉事業をカットする条例改定案を提出しました。41項目の事業を廃止・削減することを表明し、予算編成の中でさらに削減するかもしれないとも述べました。

共産党市議団は、9月市議会で「市が示した来年度予算案の試算はきわめて不正確だ。コロナで税収減となるのは新座市だけではない。リーマンショックの時は税収減以上の地方交付税が来た。国の地方財政計画が明らかになる12月まで待つべきだ」と批判しましたが、12月議会での石島陽子市議と笠原進市議の一般質問で「25億円の財源不足」は間違いだったことがはっきりしました。

表1を見てください。令和3年度の歳入は約500億円で歳出524億5千万円との差額は約25億円です。これが「約25億円の財源不足」の根拠です。3年度の歳入が2年度と比べ約20億円減った大きな理由は歳入の⑥繰入金が18億円以上も減ったことです。12月で約19億円ある財政調整基金は、「コロナの影響で令和2年度の法人市民税等が約14億円以上減るため3月には5億円余りとなってしまう」と市は9月議会では試算しました。3ケ月たった今、この試算は全く違うことがはっきりしました。

笠原市議は一般質問で、「9月議会では市は法人市民税等が約14億円(26・5%)も減ると試算したが、すでに法人市民税は80%、譲与税等は88%も納税されている。あと4ケ月も残っている時点でこんなに納税されている。市の見通しは間違っていたのではないか」と指摘すると、財政部長は「笠原議員の言うように納税されています」と答え間違いを認めました。

3月末での財政調整基金の見通しも、9月では5億円でしたが、現在は20億円になると変更されました。歳入の繰入金が15億円増えることになりました。歳出については①人件費と⑦投資的経費は9月議会では令和3年度は2年度と同額と試算されましたが、現在では人件費が約2億円減り、投資的経費は約13億円減ることか市の資料で示されました。歳出では人件費と投資的経費で合わせて約15億円減ることが明らかになりました。「約25億円の財源不足」と9月議会で説明したことが、現在では歳入で約15億円増え、歳出で15億円減ることから、5億円余ることになり、「25億円の財源不足」は間違いであることが明確になりました。

12月議会では、福祉事業を多くカットする理由について市長はコロナによる税収減とは言わず「今まで新座市は高福祉だったが、これからは中福祉にするためだ」と答弁を変更しています。

表1 令和3年度当初予算の試算(9月市議会に提出)

(にいざ民報 2020年12月20日 No.1883)