一人ひとりに寄り添う学習支援 彩の国子ども・若者支援ネットワークの取り組み

1月25日、「子どもの貧困と学習支援、〜今を生きる子どもたちに共感と希望を〜」と題して、一般社団法人彩の国子ども・若者支援ネットワーク代表理事の白鳥勲氏を講師に、新座市議会議員研修会が開かれました。市長、教育長をはじめ担当の市職員も参加しました。

明日へのサポート

彩の国子ども・若者支援ネットワークは埼玉県の要請を受け、県内の生活保護・生活困窮世帯の小学生・中学生・高校生を対象に、アスポート学習支援(家庭訪問と無料の学習教室)を行っている団体です。白鳥先生は県内の高校教師時代に、貧困や低学力、問題行動などを抱える多くの生徒と関わってこられ、県が事業を立ち上げる際に声を掛けられたそうです。H29年度は県内の24市23町村からアスポート学習支援事業を受託しています。

アスポートとは明日へのサポートという意味です。学習教室を支えるボランティアは787人、その内670人が大学生で協力大学は62校もあるそうです。新座市は特別養護老人ホームなどが協力し、県内でも6市のみの小学生教室も開いているなど先進市である、と評価されました。埼玉の学習支援事業は、福祉と教育をつなげる先進事例としてNHK「クローズアップ現代」でも放映されました。

家庭環境が決定的 寄り添った支援で

白鳥先生は「現在平均所得の40%以下の世帯で暮らす子どもは、7人に1人。母子2人世帯が多く、食費は2人で1食四百円という生活。約半数が急な出費五万円の蓄えがなく、こうした世帯では何かあったら高校を退学するしかない。こうした貧困の連鎖が継続することを政治の責任で何とかしようと、子どもの貧困対策法や困窮者自立支援法の学習支援事業がつくられたが、埼玉の事業がモデルとなっている」と話されました。

「小中学生の授業の理解度や成績は家庭環境が決定的である。身だしなみが整っている、宿題をやってある、空腹ではない、『行ってらっしゃい』と言ってくれる大人がいる、といったエネルギーを充足してくれる家庭があるから、元気に学校へ行ける。困窮家庭では親自身が問題を抱え、経済的、精神的、時間的に子どもを支える余裕がなく、毎日のあたりまえの登校準備の不十分さの積み重ねが問題である。子どもの意欲や根性などに解決を求めても解決しない」と、家庭訪問で信頼関係をつくることと学習教室を支援の2本柱にしているそうです。

学習教室では一人ひとりに寄り添って支援をするので、例えば「二時間自分のためだけに関わってくれる大人がいる」ことで、自分が大切にされている実感を持てるようになったり、わからないことを質問できるようになり、学習教室が居場所になっていくそうです。

「塾はあこがれだった」「九年間も勉強がわからないままだった」という子どもの言葉に胸が痛みましたが、学習教室が無ければ高校に行けなかった子どもたちが今、社会人として頑張って働いている、という話に一人ひとりを大切にする実践の重みを感じました。

(記・石島陽子市議)

彩の国 子ども・若者支援ネットワーク代表理事 白鳥勲氏

(にいざ民報 2019年2月3日 No.1799)