「財政が大変」は社会保障のせい? 大型公共事業と国・県の貧弱な政策が市の財政を圧迫

並木新座市長は平成31年度施政方針の中で「本市の財政運営は危機的な局面を迎えており、これまでどおりの行政サービスを続けていては、この状況から脱却することはできません。」と述べ、難病見舞金など市民サービスの10事業を廃止・削減することを合理化し、さらに続けることを示唆しています。また、昨年9月に発表した「新座市財政健全化方針」では、「増加し続ける社会保障関係経費等の歳出を賄うだけの市税等の歳入が十分に得られていない」と述べ、扶助費(社会保障関連経費)の増大が財政の危機の原因であるかのように説明しています。

しかし、こうした考えは間違っています。新座市の財政力指数は全国791市の中で117番目、上位7分の1の中に入る財政力のある市です。市民一人当たりの市税納入額も103位で全国上位です。市民は高い税金を納めているのに、財政危機を招いているとすれば、それはお金がないのではなく、財政運営能力の欠如にあると言わざるを得ません。

生活保護費など社会保障制度の財源は、国が2分の1、県と市が4分の1ずつ負担するものが多くなっています。表1は事業費の国・県・市の負担割合を示したものです。5項目だけで125億円を超える大きな額ですが、市が負担しているのは34億円で全体の4分の1ほどです。表2(裏面)は過去3年間の扶助費の変化を示したものです。平成27年度は150億円、29年度は162億円で12億円増加していますが、市の負担は51億円でほとんど増えていません。市長は財政危機の原因を扶助費の増大と宣伝していますが、それは間違っています。

表1を見てください。5番目の子ども医療費は18歳まで無料で全県1位の優れた事業ですが、国は1円も出していません。自民・公明政権は子ども医療費に冷たく制度化していません。他県の多くは中学校卒業まで無料としているのに埼玉県は小学校入学前までしか無料化していません。だから6億5000万円ほどの事業費の88%も新座市が負担しています。これは、国や県の貧弱な政策を新座市が市民のために補っていることであって、誇ることだと思います。「財政が大変」と宣伝して他市なみに引き下げてはなりません。市民の福祉の向上は、市の一番の仕事です。

それでは、財政運営の問題点はどこにあるでしょうか。それは、近年、大型公共事業を同時に進めていることにあります。新座駅北口土地区画整理事業(総額105億円)を進めているのにさらに、大和田2,3丁目土地区画整理事業(総額104億円)も開始したことに原因があります。

表3を見てください。2つの土地区画整理事業費は平成31年度で41億円4400万円となり市の負担は後年度負担の市債(借金)を含めると約30億円にもなります。国と県の負担はわずか4.2%しかありません。表1から表3までを見ていただければ扶助費の増大が原因ではなく、大型公共事業をいくつも同時に進めたために、市民の税金がそちらに流れ、市財政を圧迫していることがわかっています。

表1 扶助費の財源内訳(上位5項目)平成31年度予算から

表2 扶助費の三年間 の変化(決算資料から)

表3 二つの土地区画整理事業の財源内わけ(平成31年度予算から)

(にいざ民報 2019年3月17日 No.1805)