戦争を避けるため私たちは何をすべきか 市民が野党をつなぐ埼玉4区の会講演会

戦争を避けるため私たちは何をすべきか 市民が野党をつなぐ埼玉4区の会講演会

「戦争を避けるため私たちは何をすべきか」と題し、市民が野党をつなぐ埼玉4区の会主催の講演会が5月27日(土)に、ふるさと新座館で行われました。講師は元内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当などを歴任)、NPO法人国際地政学研究所理事長の柳澤協二さんです。講演の要旨は次のとおりです。

【安保3文書の論理】

安保3文書の論理は、「ロシアのウクライナ侵攻によって戦争に関する秩序が崩壊した。中国も同じことするであろうから、自由で開かれた秩序を守るために備え、気が合う国を味方とするという価値観で敵を定義する外交であり、このままでは中国と戦えないので5年間で戦えるようにするため、防衛費を増やすというもの。焦点は反撃能力。 しかし、守るべき日本の経済的繁栄は、GDPシェアは6%(中国17%)、1人当たりGDPは27位、先端技術では4位である。これは中国のせいではなく、日本の政策の失敗が原因なので、中国を除外した供給網をつくればよいというものではない。また、尊敬される国でありたいという願望から、困っている人に寄り添う自立支援型ODAから、他国の軍隊を支援できるように武器を含むOSAへと変えようとしている。

【理解に苦しむ反撃能力】

撃ち落とせないから撃つ前に叩くと言っているが、相手が撃った後に放物線を解析しないとミサイルの行先はわからないので、攻撃着手をどう認定するのか理解に苦しむ。反撃すれば相手も反撃してくるので、ミサイルの撃ち合いになり、国民を守ることにならない。最も確実な方法は戦争にしないことである。

【戦争をいかに回避するか】

戦後初めての戦争の不安で、戦争に備えるという発想になっているが、欠けているのは戦争をいかに回避するのかという視点。日本は狭隘な国土、海外への依存度が高い、少子化などの条件のもと、「やられたらやり返す」では補えない。それなのに、被害と覚悟が国民に知らされないため、戦争のリアリティがない。 台湾有事シュミレーションは、米軍が即時参戦する、日本の基地を使用、長射程ミサイルなどの条件のもとで、「勝利するが莫大な犠牲が出る」というもの。得られる成果は台湾の現状維持であり、犠牲と成果について議論が必要だが、日本にはこういう議論がない。

日本の基地からの出撃は事前協議事項で、イエスと答えれば日本有事になり、ノーと答えれば日米同盟崩壊になる。この政治の悪夢を避けたいなら戦争を回避するべき。

【ウクライナ戦争の教訓】

外交なしに戦争は防げないし、始まった戦争を終わらせるのは困難である。大国の論理ではなく、非戦の国際世論による秩序の設計が必要。

【戦争は人を不幸にする】

非戦の原点は、戦争は人を不幸にするということ。自衛隊のイラク派遣で認定された隊員の自殺者は40人、生き残った兵士にはトラウマも。防げる戦争で無駄に死なせてはいけない。平和とは、憲法前文にあるように、戦争の心配・抑圧から解放されること。

【考え、伝えるべきこと】

戦後世代にとって、憲法と安保は復興の成功体験。ところが、今を生きる40代50代のロストジェネレーション世代は、自分たちをターゲットにした政策がなく信じる社会がなく、世代交代とともに憲法が風化している。戦争と平和・他者の犠牲を人としてどう受け止めるか、押しつけではなくヒントを伝えることが大事。戦争は政治の選択、政治は国民の選択。後悔しないため、主権者としての判断を。

平和憲法だよ!憲法9条

(にいざ民報 2023年6月4日 No.1993)