デジタル田園都市構想の概要、問題点、展望とは 中山 徹さん(自治体問題研究所理事長・奈良女子大学教授)

8月21日、24日に日本共産党埼玉県全県地方議員会議が行われ、6人の新座市議も参加しました。伊藤岳参議院議員の「保険証の存続、マイナンバー問題の国会論戦の到達点と今後のたたかい」、坂井希(党中央ジェンダー平等委員会事務局長)の「ジェンダー平等とハラスメント根絶」、中山徹奈良女子大教授の上記の表題の講演がありました。中山徹氏の講演の概要をご紹介します。

デジタル田園都市国家構想とは

岸田首相が掲げる「新しい資本主義」とは、格差拡大をもたらした新自由主義を乗り越えるものとして提案されたものである。ねらいの一つは、新自由主義が生み出した孤独、環境、教育など様々な社会的課題の解決を民間が収益活動として取り組める仕組みを作ること、もう一つは新自申主義が生み出した大都市と地方の格差を地方のデジタル化によって解決するデジタル田園都市国家構想である。これらは新自由主義の弊害を除去し、新たな発展を促す要とされている。つまり、社会的課題の解決を企業が進めるため、それによって利益が出る仕組みを作るということ、孤独、孤立対策や環境保護に加え、医療や介護、教育等これまで「官」が担ってきたサービスを「民」(企業)が担う仕組みづくりである。

公共部門を民間企業に開放する

例えば和歌山県吉備町では、データ関連基盤、医療・福祉、移動は富士通、教育はベネッセコーポレーション、物流はANAホールディングス、地域ポイントはNTT西日本、防災・エネルギーはNTTファシリティーズが主担当となっている。福島県会津若松市では、食・農業は凸版印刷、観光・ヘルスケアはアクセンチュア、防災はソフトバンク、行政はアクセンチュア、エネルギーはパンプージャパン、廃棄物はSAP、教育は凸版印刷、ものづくりはSAPが主担当となっている。まさに「官」から「民」ヘの移行である。

地方自治の発展が大前提

地方の発展を考える場合、地方自治の発展、すなわち団体自治と住民自治の発展が不可欠である。DXを進めるために自治体の独自施策を縮小させることは、地域の独自性を失わせることに繋がる。また、考えない自治体を作ることになる。自治体は、国の下請けではない。むしろ情報技術の発展が、地域の独自性を豊かにし、地域のことを考える自治体に繋がるようにすべき。市民は利用者であると同時に、自治の担い手である。住民自治の視点が欠落すると、市民はバラバラの利用者になり、地域を支え地域を維持し、市域を発展させる担い手にはならない。

【嶋田好枝市議・記】

(にいざ民報 2023年9月3日 No.2004)