最賃目安 生活改善の視点なし 地域間格差も拡大
今年の地域別最低賃金(時給)の引き上げの目安額が、全国加重平均41円(4・3%)増となりました。物価高騰の後追いで生活向上にはつながらず、地域間格差も拡大するものになっています。
目安通りの改定なら、全国加重平均は現在の961円から1002円となりますが、実際に1000円を超えるのは8都府県です。
最高額は東京の1113円。最下位は892円で9県並び、17県が800円台に取り残されます。
中央最賃審議会の小委員会報告は、目安の根拠として、岸田政権による平均1000円達成の目標と、昨年の最賃改定以降の消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が4・3%上昇していることをあげています。
昨年、物価に大きな変化が生じたときは対応を検討すると表明しながら、再改定を怠ってきました。今回、ようやく物価高騰を後追いしただけで、労働者の生活を改善させる視点がありません。
労働者側委員は、現在の最賃では「最低限必要な賃金水準」に到達していないと指摘しています。全労連が全国各地で実施する最低生計費調査では、どこでも時給1500円以上が必要です。
目安が地域間格差を2円拡大し、221円に広げることも重大です。岸田政権の「骨太方針」が金額差の是正には触れず、「比率」の改善に問題をすり替えたことが引き金になりました。
今年から、ランク区分を4から3に減らし、「下位ランクの目安額が上位ランクを上回ることは理論上あり得る」と指摘しながら、昨年目安の1円格差拡大よりも悪化させ、期待を裏切りました。
地域をランク分けする目安制度は限界です。全国一律制度への転換が求められます。
中小企業支援策について、小委員会報告は、赤字企業でも賃上げできるよう「さらなる施策」を政府に注文しました。
現行の「業務改善助成金」は不十分で使い勝手も悪いと不評です。岸田政権の打ち出す賃上げ減税は赤字の中小企業に恩恵がなく、実効性がありません。
昨年の地方最賃審議会で中小企業支援の「新たな制度」の要望が広がり、9県では税・社会保険料の負担軽減をあげました。日商など中小企業3団体は、今年4月の政府への最賃要望で「新たな助成制度の創設」を要求。政府はこの声にこたえる責任があります。
これから地方審議会での審議がはじまります。物価高騰を上回って生活を底上げし、地域間格差を縮小にむけ大幅上積みのたたかいはこれからが正念場です。(田代正則)
【しんぶん赤旗 7月30日から】
(にいざ民報 2023年8月6日 No.2001)