財政非常事態宣言は誤りではなく「英断だった」と市長自ら発言

笠原すすむ市議
笠原すすむ市議

笠原進市議は3月16日の一般質問で「財政非常事態宣言は誤りだった。宣言では『市税が大幅に減る見込み』として福祉などの市民サービスを削減したが、税収は減らずに令和2年度も3年度も過去最高となった。間違えた原因と責任をどう考えているか。財政調整基金が令和3年度末で75億円と、これも過去最高となった。お金は十分あるのだから、削減した市民サービスはすべて元に戻すべきだ」と提案しました。

並木市長は、「財政非常事態宣言は誤りではなかった。英断だった」と自画自賛の答弁をしました。傍聴していた人だちから、驚きと怒りの声が大きく上がりました。

並木市長は「事業見直しで支出削減したことで令和3年度の予算編成ができた」と、従来と同じ答弁を繰り返しました。

財政非常事態宣言(以下「宣言」とする)の財政試算の誤りを笠原市議は次のように指摘しました。

①「宣言」の財政試算では、「法人市民税や地方消費税交付金などは当初予算(53億4500万円)より14億1600万円減となる」と予測したが、実際には当初予算より8億1000万円も増えた。

②令和2年度末の財政調整基金は、「宣言」の試算では5億1500万円だったが、実際には29億4120万円となった。

③令和3年度予算については、「宣言」の試算では歳入の合計が500億1100万円で、令和2年度より20億6200万円も減るとしていたが、実際には試算より57億2200万円も増となった。

市民サービスを削減したのは新座市だけ

並木市長は、「新座市だけが減収になると見込んだわけではなく、県内市町村全てで減収を見込んだ。財政非常事態宣言を発出して、市民サービスを削減したのは県内では新座市だけだが、それは財政調整基金が他市に比べで少なかったからだ。早期な判断が逆に歳入増も生んで、75億円の財政調整基金を積みますことができたと私は大変英断だったというふうに思っております」と答弁しました。また、削減した市民サービスを元に戻すことについては、「経常収支比率の高い状況は続いており、コロナも全然収まっていません。財政調整基金がたまったからといって、これをすぐに復活して戻すということではなく、もう少し様子を見させていただきたい」と答弁しました。

広報にいざ4月号では、財政非常事態宣言を解除する理由として、「人件費や各種補助金をはじめとした事業全般の見直しなどの徹底した取り組みなどにより、本市の財政状況は当面の危機からは脱することができたものと判断し」と述べています。そして、貯金額(財政調整基金の残高)をグラフで示しています。令和2年10月の財政非常事態宣言の発出時には9億6000万円だった貯金が、令和4年3月の解除時には約75億円に急増しています。なぜ、わずか1年半の期間で、約65億円も貯金が増加したのでしょうか。市の説明は事業全般の見直しで「危機から脱した」と言っていますが本当でしょうか。

事業見直しによる事業の削減額は21億8431万円です。事業費の削減だけでは65億円も貯金が増えたことは説明ができません。

表1を見てください。財政非常事態宣言の試算では個人市民税や法人市民税などが大きく減る見通しを示していましたが、結果は減収ではなく大きな増収になっています。この増収こそ1年半で65億円も貯金が増えた要因ですが、市長はこのことにふれません。市長は「コロナ禍で市税が大きく減る見込み」と自ら間違った財政試算をして「財政非常事態だ」と宣伝した自作自演の財政非常事態宣言だったのです。「英断」という自画自賛など許されるものではありません。

表1 財政非常事態宣言(令和2年・2020年10月1日)の財政試算とその後の財政状況の比較

(にいざ民報 2022年4月10日 No.1942)